BLUE STAR|ブルースターマガジン

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やまなし映画祭と甲府シネマミーティング

原作、監督、主題歌と山梨県出身の人によって映画化される山梨放送開局60周年記念作品「太陽の坐る場所」が10月4日、全国公開、山梨は全国に先駆けて9月27日に公開された

9月7日。「太陽の坐る場所」に関する2つのイベントが開催された。甲府の映画文化の向上と中心市街地活性化をコンセプトにスタートし、山梨にゆかりのある映画にスポットを当てる今年10回目の開催となるやまなし映画祭と、山梨県立図書館で映画についての学びを深めるために定期的に開催されている甲府シネマミーティング。原作、監督両名を招き、「太陽の坐る場所」がいかにして作られたのかその確信に迫る。やまなし映画祭の会場は甲府シアターセントラルBe館。幼少期に映画を見にいくのは、決まって甲府中心だった。友達と単線鉄道身延線に揺られ、駅から街を歩き、映画館に行くことは小さな僕らにとっては一つの大きな楽しみであり冒険だったことを思い出した。辻村深月原作、「ツナグ」の上映を終え、会場はおおいに賑わう中、この日の主役である二人が壇上に姿をあらわした。「太陽の坐る場所」は、矢崎監督の言葉をお借りすると、"辻村文学における山梨三部作とされる一作"である。なんだか、スターウォーズやロードオブザリング、もしくは辻村深月肝いりのジョジョの奇妙な冒険シリーズみたいでかっこいい。やまなし映画祭、シネマミーティングで語られた内容とともに、本作についてフォーカスしていこう。

 

 

 

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繋がりが背中を押してくれた

辻村深月さんは2012年「鍵のない夢を見る」で直木賞を受賞した作家、山梨県笛吹市出身。2004年、「冷たい校舎の時は止まる」でメフィスト賞を受賞し今年で作家デビュー10周年を迎えた。時を同じくして山梨放送が60周年を迎え、記念映画作品として辻村深月原作、文藝春秋より刊行されている「太陽の坐る場所」に白羽の矢が立ったのだ。

矢崎仁司監督は山梨県鰍沢町出身。1992年「三月のライオン」でベルギー王室が主催する国際映画賞を受け国際的に高い評価を獲得。以降数々の作品のメガホンをってきた。代表作に「ストロベリーショートケイクス」「スイートリトルライズ」などがある。最新作の「太陽の坐る場所」は主演の響子役に水川あさみ、同級生の今日子役に木村文乃、同じく同級生・島津役に山梨県塩山市(現甲州市)出身の俳優・三浦友和を父に持つ三浦貴大。主題歌はレミオロメン以降、ソロ活動を続けている山梨県笛吹市出身の藤巻亮太が作品のために描き下ろした。当時面識はなかったそうだが、辻村深月とは同郷である。

「人が繋がって出来た映画です。スタッフも役者も主題歌も、人との繋がりが作品の背中を押すようにして映像化することができました」と話す監督の言葉通り、パズルのピースが重なるようにして「太陽の坐る場所」は実写化された。

 

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辻村文学に挑む

開口一番、矢崎監督は「辻村文学に挑めたことに感謝したい」と口火を切った。「作品の映像化は娘をお嫁に出す気持ち。いいお家に嫁いだなあって思います」原作の辻村深月が続ける。

「太陽の坐る場所」は事件性こそないものの、ミステリー作品として仕立てられている。映像化するのは難しいのではないかと辻村深月は考えていたようだ。しかし、冒頭、高間響子、鈴原今日子、二人の"キョウコ"が夕闇前の落ちかけの陽が差した体育館でバスケットボールを突き、待ち合わせをするシーンを見て、「わたし、ここ書いた。」と確信した。作品を通して"原作よりも原作"とこれ以上ない賞賛の言葉を贈った。矢監督は辻村深月の「ゼロ。ハチ。ゼロ。ナナ。」を読んでからというもの辻村作品の実写化に意欲的だった。「ぜったいに俺が撮る」と決意。念願叶っての本作の脚本はリライトを30数回繰り返したという。人間の心の闇に触れ、ズルリと引きずりだす、静かだが、苛烈な辻村文学に挑むことは容易なことではなかった。ロケハンも数え切れないほどおこなった。主題歌にも、「思い切り片思いの曲を」と藤巻亮太へオーダーした。全ては作品が愛してもらえるような映画を撮るため、なにより"原作者を第一の観客"と位置づけている、矢崎監督の作品への愛だ。壇上で作品を語る言葉こそぶっきらぼうだが、サングラスの奧、照れくさそうで嬉しそうな監督の表情が見てとれた。

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人には抜かないトゲがある

文庫化したときにあらためて読み直したとき、作品からは、音もなく、充満したガスのような苛立ちを原作者、辻村深月はふつふつと感じたという。「10代にあった出来事が大人になったときに忘れ去られ、まあいっか。と、いいこともわるいことも時の流れに納得してしまっている自分にも周りにも怒っていたんだと思う」「太陽の坐る場所」にはそういった憤りやもどかしさが滲んでいる。しかし、実写化されたことではじめて怒り以外の気持ちになれたと心境を語る。事実、書けなかった部分、表現できなった部分まで映像で書いてくれているという辻村深月の"島津"的存在、矢崎監督が辻村文学を映像化することで、さらなる昇華を遂げたのだ。いわく、人には"抜かないトゲ"があるという。チクチクと痛むが、抜いたら心がバラバラになってしまうのではないか。という、"抜かないトゲ"を表現することに成功したといえる。矢崎監督が"トゲ"について伝えたのは、何度も制作、編集の現場に足を運び、主題歌を手掛けた藤巻亮太へだった。「エンドロールが流れても、音楽が鳴り止むまでは作品は終わらない。」主題歌の仕上がりに矢崎監督は太鼓判を押す。

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あの頃のあなたを観る

ロケは山梨にこだわる。山梨を映画王国にしたいという野望が矢崎監督にはあるからだ。原作に具体的な明記はされてはいないものの、紛れもなく、山梨県が舞台となっている。映画を通して、ここ知ってる。あ、あそこだ。という山梨県に住んでいるからこそ共有できる感覚、土地の匂いが作品に滲みついている。劇中、"キョウコ"が電車で帰省する際、トンネルの数を数えるシーン、原作にはないが辻村深月お気に入りだという。山梨の人なら分かる"あるある"的な表現に、東京と山梨との絶妙な距離感と人物心情が描かれている。「自分の高校時代を観た」という感覚で楽しんで欲しいと辻村深月はいう。あの頃、教室という空間に漂っていた、独特の雰囲気。友人や教師と時間を共有する場所でありながらどこか閉鎖的な場所だったのかもしれない。それは大人になったわたしたちの住む、四方を山に囲まれた盆地にも置き換えて観てみると面白い。役者たちによって、10代から大人になった時の流れをも感じさせる演技にも注目だ。矢崎監督は「二人の"キョウコ"を中心に話しは進みますが、二人以外にも愛すべき人間がたくさん出てきます。」と話す。

「太陽の坐る場所」に、10代のあなたを、もしくは、今を生きるあなたを見つけることができるかもしれない。山梨は9月27日土曜日から全国に先駆けて公開されている。

 

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「太陽の坐る場所」

学校中の人気を集め、クラスの女王として君臨していた響子。自分の立場も、好きな人も、友達すらも、欲しいものは何でも手に入ると信じていた完璧な高校時代。彼女の傍には、いつも、同じ名前を持つ同級生の今日子がいた。しかし、完璧だった高校生活も終わりが近づいてきたあの日、ある出来事をきっかけに光と影が逆転する。 そして高校卒業から10年。過去の輝きを失い、地元地方局のアナウンサーとして満たされない毎日を過ごす響子と、彼女とは対照的に、東京に出て誰もが憧れる人気女優として活躍する今日子。そんな2人の元にクラス会の知らせが届く。卒業以来、言葉を交わすことすらなかった2人がそこで再会を果たすとき......初めて語られる10年前の残酷な真実とは?

監督:矢崎仁司

出演:水川あさみ、木村文乃、三浦貴大、森カンナ、鶴見辰吾ほか

原作:辻村深月(文春文庫刊) 脚本:朝西真砂

主題歌:「アメンボ」藤巻亮太

山梨放送開局60周年記念作品

配給:ファントム・フィルム

2014年/日本/102

公式サイト:http://taiyo-movie.jp/

2014「太陽の坐る場所」製作委員会

927()より山梨先行ロードショー

104()より有楽町スバル座ほか全国ロードショー

 

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