BLUE STAR|ブルースターマガジン

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地域食材を利用した新たな試み。

ブルースターマガジン本誌の連載コンテンツ「Beauty Recipe」はブルースターマガジン的、ガストロノミー(美食学)といえるでしょう。創刊当初、プロが教える家庭料理というコンセプトで実際に飲食店を経営されているプロの料理家たちに誌面を美しく彩っていただきました。そして今年からは、山梨学院大学の健康栄養学部に協力を依頼し、学生たちの学びの場を取材。健かな食の美しさにフォーカスしたフェイズ2がスタートしました。学生たちは日々、栄養バランスの取れた健康的な献立の作成や、食材の持つ特性など、調理実習を踏まえた研究とアプローチによって学びを深めています。本記事でご紹介するのは、山梨で生産されている食材を利用した新たな活用法を模索する講義。地元食品企業からの要請を受け、学生たちが奮闘します。学部内では食を通して地域に付与する活動が活発に行われており、今回は前期から進めてきたという総括の講義に参加。課題食材を加工技術を駆使して加工食品へと変え、加工品を使ったオリジナルのメニューを考案。新しい食材利用を企業に提案します。クライアントである企業や学内の教授たちも招かれ、試食会が行われました。

IMG_2402.JPGテーマ食材は地鶏のささみ

山梨県はワインやフルーツが有名ですが、ワインビーフ、富士桜ポークなどブランドのついた畜産食材も豊富。最近ではジビエとして人気の鹿肉や馬肉も古くから食されていて、県外の方が訪れたときの評判も良いのです。鶏も例外ではありません。「甲州地どり」というブランド鶏が畜産されており、グルメ漫画の金字塔「美味しんぼ」にも登場しています。山岡さんが産地を訪れてくれていると思うと胸が熱くなりますね。ちなみに地鶏を地どりと表記するのが「甲州地どり」の正しいブランド表記なのだそうです。(詳しくはhttp://www.kosyujidori.com/kosyujidori/

今回、健康栄養学部に依頼をされたのは「甲州地どり」をはじめとし、自社オリジナルの地鶏、鶏肉から卵まで広く鶏を扱う中村農場さん(http://www.nakamuranojo.com/chicken.html)学生たちに課せられたミッションは、山梨県が「甲州地どり」以来、銘柄の開発に取り組んできた「甲州頬落鶏(ほおおとしどり)」のささみ部位の加工とメニュー提案です。ささみは高タンパク低カロリーでアスリートやダイエットには重宝されますが、味も淡泊で肉質もかたくなりやすい難儀なお肉。一般的にはやはり柔らかいモモやムネが好まれます。ほっぺが落ちそうなくらい美味しいというイメージから命名された頬落鶏。そのささみ消費を促進するような商品開発提案をすべく、学生たちは独自で加工法からメニューまでを手掛け試食会に臨みます。

 

IMG_2530.JPG真空パック、缶詰、乾燥。加工法もさまざま。

試食会までに学生たちはプレゼンするメニューを考案し、食材を加工しなければなりません。上の写真はまぜごはんの素を真空パックにしたもの。山梨学院健康科学部では真空乾燥や燻製、缶詰、殺菌、など学内で特殊な加工処理を施せるようになっています。学生たちは班毎に分かれて取り組みます。完成時のイメージを具体的に描いた上で、メニューに適した加工法を用い、準備を進めてきました。これらの加工食品がささみの有効利用の鍵となります。

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フードプロセッサーで細かくフレーク状にしたもの。ツナ缶のような味わい。このような加工食品たちが学生たちの発想と技術で和洋中さまざまな料理に変化していきます。

IMG_2452.JPG食材を美味しく長く保存する食品の加工に、麹は最適。ささみを麹漬けにしたのちに真空パックすることで、淡泊なささみにうま味を加えます。用意されたのは甲府の発酵スペシャリスト五味醤油(http://yamagomiso.shop-pro.jp/?pid=41410860)の塩麹。おいしいと評判の人気アイテムです。

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調理そして実食へ。

各班、予め決めてあるメニューを調理していきます。ここからテーマ食材である、ささみの七変化をご覧いただきましょう。深夜の空腹時には閲覧注意です。

IMG_2386.JPG下味をつけたささみを腸詰めに。ソーセージはわたしたちの生活に欠かせない加工保存食品ですね。

IMG_2447.JPG火を通した熱々のささみソーセージをカットし、野菜とともにヘルシーかつ食べ応えのあるマフィンでサンドしました。

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すり身にしたささみは肉厚なミートローフになりました。野菜が練り込んであって彩りも素敵ですね。

IMG_2473.JPG試食用に盛りつけ。ぱさぱさした食感が難敵であるささみですが。麹漬けにしてやわらかく保ち、あえものにすればちょっとしたパーティのフィンガーフードに最適。添えたレモンの香りも爽やかで食欲をそそります。さつま揚げにしたり、カレーの具材や餃子の具に使ってみたり、燻製にしたささみをピザの具として載せるなど、自由な発想でささみを美味しく食べられる料理方法をクライアントに向けて提案しています。

IMG_2495.JPGIMG_2494.JPG全ての調理が終わり、班毎にプレゼンテーション。中村農場の専務取締役中村 由紀子さんはじめ、学部のOB含む二名の社員さん、学部長や他学部の教授も招かれました。ひとつひとつ試食し、吟味していきます。もしかすると、新商品の開発につながるかもしれません。緊張の面持ちで学生たちは自分たちがプロデュースした加工食品とメニューについて丁寧に説明していました。

IMG_2514.JPGこの日、試食会に提供された料理は28品。料理対決番組の審査タイムさながら、学生も試食するゲストも真剣です。ささみという限られた部位をあらゆるかたちで加工、調理した学生たち。一長一短はありますが、総評は上々。「ささみ1つが多様な変化を遂げ、学生の柔軟で自由な発想に驚きました。ブラッシュアップしていけば新たな商品へつながるアイデアをたくさんいただきましたね」鶏を専門に扱う中村 由紀子 専務は、ジャンルを問わない個性的なメニューのなかに、発見と驚きがあり満足していたご様子。

余談ですが、陸の孤島と揶揄される山梨は周囲を山に囲まれています。そのため、食材の保存技術が古来から発達してきました。特に海産物は、山梨にとって貴重な食材です。輸送時や長期保存のため、傷まないよう醤油煮にした鮑は、煮貝と呼ばれる山梨の名物。贈答品に用いられて親しまれています。海なし県なのにマグロの消費率、お寿司屋さんの軒数はともに全国トップの水準ということから、元来、山梨県民は食材の加工、保存技術と応用に長けているのではないでしょうか。地理的なハンデを背負いながら、美味しいものを美味しく食べるために、知恵を絞り工夫をしてきた山梨の先人たちは、グルメといえますね。

地域に根ざした食材の探求。その奥深さを感じさせてくれる山梨学院健康栄養学部の講義は、いずれ学生やOBの中から食文化の革新を巻き起こすスターが現れるのではないか。そんな期待を抱かせてくれるものでした。学生たちが示した食材の可能性が、将来、地域の食文化の発展につながっていくのかもしれません。

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