BLUE STAR|ブルースターマガジン

路・線・図/RO・SEN・ZU

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山梨県北杜市ギャラリートラックスにて、SIDE CORE(サイドコア)が主催する合同の展覧会「路・線・図/RO・SEN・ZU」が3月25日から開催中だ。BIEN,HITOTZUKI,鈴木ヒラク,小畑多丘,TENGAone,松下徹,Yang02の7組のアーティストが参加。ドローイング表現を軸に作家と作品をキュレーションした展覧会となっている。ドローイングとは、美術的な解釈で線画を指す表現である。

サイドコアは2012年に「都市における表現の発展」をコンセプトに出現した、アートインスタレーションプロジェクトだ。サイドコア--日本美術と「ストリートの感性」--を神宮前BA-TSU ART GALLERYにて開催。以後、会期や形式に縛られることのない形で人々や場所を巻き込みながら展覧会を開催。いずれもストリートアートの文脈に携わるアーティストや、アカデミックアートとの橋渡しのような作品性を持ったアーティストが選出されている。第3回サイドコア --AT ART UWAJIMA 2013--以来、再び東京という「都市」を飛び出して、青森県弘前市と山梨県北杜市にて2箇所を巡る展示が今回の「路・線・図/RO・SEN・ZU」だ。
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2期目のスタートを飾る3月25日、ギャラリートラックスではオープニングレセプションが開催された。温暖な気候が連日続きいよいよ春かと予感していたが、この日は全国的に真冬に戻ったかのような寒さとなった。外の寒さとはうってかわってギャラリーはあたかかく、トラックスでのレセプション名物ともいえる料理が並ぶ。各参加アーティスト、関係者、観覧希望者が一堂に会していた。
サイドコア代表を務める高須咲恵の挨拶からレセプションパーティが始まる。この2日前に参加希望のメールを送ったのだが、快く歓迎してくれた人物だ。気さくにアーティストたちとコミュニケーションしているところを見ると、これまで互いに築いてきた信頼の厚さがうかがえる。ビジネスライクな関係ではない、数々の現場を共に乗り越えた仲間といった印象だ。アーティストがサイドコアに集まり、見る者を巻き込んでいく理由を彼女の振る舞いや人柄が体現していた。ほんのわずかな時間でもそう感じるには充分な邂逅だった。
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しばしの歓談を経て、参加アーティストでありサイドコアの運営に深く関わる松下徹がギャラリーツアーを提案してくれた。客観的な視点で作品や参加アーティストについての説明は非常に分かりやすい。小畑多丘が飛び入りで、自身の作品を解説してくれるという贅沢なサプライズもあった。アクリル板に描かれた小畑多丘のドローイング作品はナイキバスケのウェブCMで制作・使用されたもの。この作品を展示するために上部にあてがわれた木材は、ギャラリーの壁の曲面に併せその場で制作したという。「設置する際の留め具など余計なものを見えないようにするため、木組み構造で作りました」小畑多丘の徹底した美意識が集約された言葉だ。窓から日が指した際に、作品に落ちる影まで想定して設置されている。
今回展示されているようなドローイング作品は、自身の個展では展示されることはないだろうと本人は語る。小畑多丘の作品といえば木彫でブレイクダンスの身体性を表現する圧巻の「B-BOY」シリーズである。しかし、本展覧会では木彫作品を制作する際に出た木型を使う焼き物の作品群や、「B-BOY」シリーズの要素を切り取り、粘土を使って対極の表現で示した新しい作風の制作作品が展示され、パブリックイメージと異なる小畑多丘のB面ともいうべき表情を覗くことが出来る。「路・線・図」のキュレーションと展示作品は、サイドコアというフォーマットでギャラリートラックスだからこそ実現した貴重な機会となっているのだ。

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ちょうど一年前に「甲府ストリート再生事業」の元に行われた、「#kofumuralproject」で甲府市内に壁画を制作したHITOTZUKI(ヒトツキ)。「MURAL DECORD」シリーズは壁画で描いた図(正確にはそれに近い図を再現して)を絵画サイズにフォーマットした作品。「普通は下絵を描いて、大きな壁画を描く。HITOTZUKIの場合は、その逆というのが面白い」と松下徹は話してくれた。美しい線と塗りで、風景と調和する無限の広がりを感じさせながら、日本画独特の平面的な構図を継承する。ストリートアートと日本美術の両面を一度分解し、HITOTZUKIのフィルターを通して再構築されたオルタナティブな世界観が作品の魅力。
TENGAone(てんがわん)の作品は一見するとダンボールを破って描かれた作品に見えるが、リアリティ溢れる写実描写を得意とするTENGAoneならではのギミックが施されている。見る者がその仕掛けに気づくか否かによって、愛らしくもあり、シニカルにも感じさせるのだ。日本を代表するグラフィティライターの第一人者による圧倒的なスキルの為せる技。他にもオブジェ作品が展示されており、それぞれが今にも動きだしそうなほどにリアルで不気味で、可愛らしい。
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別室には、Yang02(やんつー)の作品がBIEN(びえん)作品と共にセッティングされていた。Yang02は別の展示制作により不在とのことで、代わりに愛弟子であり、ライバルという石毛さんが作品を紹介してくれた。ロボットやプログラムを構築し、絵画を制作するYang02ならではの手法が用いられた作品だ。滋賀県近江八幡市に立つ昭和初期の町家を改築したボーダレス・アートミュージアム「NO-MA」に展示されている作品と連動し、リアルタイムでロボットが描いたドローイングのラインを画面に表示する。映し出されるラインはグラフィティのスローアップ手法(曲線でふわふわ感のある文字が連なっていく、グラフィティといえばイメージする人が多い手法)のリズミカルな線の特徴をAIに学習させ、データ量に比例して上達していくという。人とロボットの「絵を描く」ことの違いにまでテーマを掘り下げた実験的作品である。松下徹いわく「あまり言いたくはないのですが」と冗談交じりに前置きをした上で、「絵画表現の最先端を行くYang02はアート界のスティーブ・ジョブズですね」と評した。対してサイドコアの名付け親でもある松下自身の作品は、ある意味でYang02に通ずる「プログラム」に近いものだが、その手法はアナログ的だ。独自に調合した塗料での化学反応や振り子の原理を用いて制作される。半自動生成された作品には魔方陣のような幾何学模様が描かれ、抜群の存在感を放っていた。
人が読み書きする様々な言語記号、自然界に存在する土や植物を使い、ドローイング表現をディープかつミニマルに表現した鈴木ヒラクの作品や、身の回りのものをランダムに置いて輪郭をなぞる、視覚の多様性に意識を向けたBIENの作品など、全ての展示に見どころがある。東京、そして遠方は茨城県つくば市から足を運んだ一般参加者たちとともに、ギャラリーツアーに耳を傾け目を見開いた。
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「大きなテーマは、ドローイングと移動。ストリートアートも場所や身体を移動させて描かれるもの。アートを通じ文化的な移動と交流を図り、路線図を描くことが本展覧会の目的です」ツアーの最初に「路線図」と名付けられた意味と目的を話してくれた。7組のアーティストによるドローイング(線)と場所(点)を結び、サイドコアによる文化的地図を描いていくのが「路線図」なのである。
一口にドローイングといっても、先に紹介したように、個性の際立った7組による作品は、表現もキャンバスとなる題材もまるで違う。そこに、合同展覧会の醍醐味がある。ギャラリートラックスという一地点だからこそ成立する展示と、そこに集ったアーティストそれぞれが描く線を作品から見出し繋げていくことで、見る者の路線図が出来上がっていくのだ。展覧会は4月16日まで、金、土、日、月のみ開廊している。旅をするアート展が、新しい視点と新しい地図を日常に与えてくれるかもしれない。

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展覧会概要
参加アーティスト: BIEN / HITOTZUKI / 鈴木ヒラク / 小畑多丘 / TENGAone /松下徹 / yang02 
タイトル:SIDE CORE 路・線・図 
第1期:2017年3月20日(月) - 3月21日(火) 
会場:SPACE DENEGA / 住所: 青森県弘前市上瓦ヶ町11-2 
時間:3月20日 17:00-21:00/3月21日 9:00 - 13:00
第2期: 2017年3月25日(土) - 4月16日(日) 
会場:GALLERY TRAX / 住所: 山梨県北杜市高根町五町田1245 ※バスタ新宿より、新宿~諏訪・岡谷・茅野線で2時間30分程度、徒歩10分
時間:11:00~17:00 金、土、日、月曜日オープン
イベント
2017年3月20日(月)20:00~「OPEN TABLE MEETING」@SPACE DENEGA 
2017年3月25日(土)15:00~(予約制)「GALLERY TRAX オープニングパーティー」 
主催: SIDE CORE(代表 高須咲恵) 
問い合わせ: sidecore.tokyo@gmail.com
 
SIDE CORE RO・SEN・ZU Exhibiton - OUTLINE
BIEN / HITOTZUKI / HIRAKU SUZUKI / TAKU OBATA / TENGA ONE / TOHRU MATSUSHITA / YANG02
Term1: 2017/3/20 (mon) - 2017/3/21 (tue) 
SPACE DENEGA: 11-2 Kamigawaramachi, Hirosaki-shi. Aomori 
3/20/ 17:00 - 21:00 / 3/21 9:00 - 13:00
Term 2 : 2017/3/25 (sat) - 2017/4/16 (sun)
GALLERY TRAX: 1245 Gochoda, Takanemachi, Hokuto-shi. Yamanashi
Open only Friday - Monday (11:00 - 17:00)
 
Event 
2017/3/20(mon) 20:00 - "OPEN TABLE MEETING"     
2017/3/25(fri) 15:00 - "Gallery TRAX opening party"
Curated by SIDE CORE (Sakie Takasu)
Contact: sidecore.tokyo@gmail.com
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Article=Tomohisa MOCHIZUKI